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第72回日本病院学会 日本病院学会/日本看護学会合同企画

看護業務改善による働き続けられる職場づくり

第72回日本病院学会において「看護業務改善による働き続けられる職場づくり」と題して日本病院学会と日本看護学会の合同企画のセッションが開催された。

医療法人和同会広島シーサイド病院の看護部長 堀百合子氏は「看護業務の効率化先進事例アワード2021」を受賞した「改善活動の推進による働き続けられる職場環境づくり~広島県版自己点検ツール「チャレンジ」を活用した3か年に亘る業務改善の取り組み~」について報告し、2021~2022年度「看護業務の効率化試行支援事業」に参加している社会医療法人社団沼南会沼隈病院 地域医療支援センター 入退院支援室 主任 赤木範子氏は「看護業務の効率化2020」を受賞した公立羽咋病院の取り組み「入退院支援の活動からつなぐ看護へ-外来でのスクリーニングを看護計画に直結させる-」を自施設内でも取り組んだ経過を報告した。

医療法人和同会広島シーサイド病院は広島地区二次保健医療圏域に位置する医療療養病床に介護医療院を併設した療養型機能の病院である。2018年4月当初、20%を超える離職率、看護部及び中間看護管理者の自律性・活気が乏しいという状況があった。改善活動の停滞、教育や情報共有不足が影響を及ぼしていた。そこで、看護職が働き続けられる職場作りを目指す広島県版自己点検ツール「チャレンジ」を活用して職場の課題を可視化し、看護業務の効率化に取り組んだ。

堀百合子看護部長は「職場改善は多職種で取り組む必要がある」と前提を示し、業務改善・人財育成・情報マネジメント・チーム医療の推進といった4つの観点から働き続けられる職場作りを行ったと説明した。特に、業務改善においては排泄ケアに注目し、給水パッドの品質を見直して深夜帯の給水パッド交換をなくすことで患者の睡眠を妨げることがなくなり、患者の安心・安楽につながるとともに深夜勤の看護師の負担も軽減した。また、新型コロナウイルス感染症拡大の折にはレッドゾーンの出入りを減らすためにさらに吸水パッドの交換回数を削減したが、事前に給水パッドの見直しを行っていたことで寝具への漏れやスキントラブルは増加しなかった。他にも中間看護管理者のマネジメントラダーの活用や情報管理の平準化、多職種参加型の研修を実施するなど、3年間多角的に業務改善に取り組んだ結果、離職率は4.3%まで低下した。看護師の適正配置が可能になったと同時に看護業務にやりがいを見出すことができた。

社会医療法人社団 沼南会沼隈病院は118床のケアミックス病院で、在宅医療・通所・入所施設等を有し医療・看護・介護がシームレスに提供できるよう地域医療に取り組んでいる。地域包括ケアシステムの推進に伴い、入退院支援を充実させる必要があった。しかし、入院に関する帳票類が多く業務が煩雑で在宅・外来・病棟間の情報の伝達と共有が不十分であることや、緊急入院が75%を占め、一般病棟ですべての入院を受け入れるために入院に関わる病棟看護師の時間外業務が多いことが挙げられた。そこで、入退院支援の充実と業務の効率化を図るために、「看護業務の効率化試行支援事業」に参加し、入退院支援部門の開設に取り組んだ。

地域医療支援センター 入退院支援室の赤木範子主任は効率羽咋病院の取り組みを試行するにあたり、「過去の受賞事例を参考にしつつ、沼隈病院の独自性を出したい」と話した。支援者の公立羽咋病院からのアドバイスは帳票類の整理に行き詰った際に参考にし、適正な帳票削減計画を心掛けた。入院前情報の管理においては、帳票を整理したが現行の電子カルテでの運用が困難であることが発覚したため、新たな帳票の運用をやむを得ず保留することになったが、予約入院登録の項目を入院前の情報共有に活用するなど工夫している。今後はより多くの職種が共同して入退院支援にあたることができるように電子カルテシステムの構築・見直しやスタッフ教育にも力を入れる方針である。 最後の質疑応答では、来場者から「業務改善に取り組むにあたり、現場のスタッフにどのように協力を求めたか」といったマネジメントに関する質問が上がり、会場との交流が活発に行われた。

【関連事例】

●医療法人和同会広島シーサイド病院
改善活動の推進による働き続けられる職場環境づくり
~広島県版自己点検ツール「チャレンジ」を活用した3か年に亘る業務改善の取り組み~

参照事例はこちら

●公立羽咋病院
入退院支援の活動からつなぐ看護へ
-外来でのスクリーニングを看護計画に直結させる-

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